Bookレビュー2011-vol.29 松田久一『「嫌消費」世代の研究-経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち』
「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
- 作者: 松田久一
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/11/13
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 204回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
「クルマ買うなんてバカじゃないの?」のオビコメントが強烈な1冊。
本書が書かれた2009年11月時点での20歳後半の世代を「嫌消費世代」と定義して、
その特徴について論じられている。
また、経済だけではなく、人文学的な観点からの「世代論」についても歴史を遡って解説されており、
共通した年齢のときに共通の体験をしていることが、その世代に共通する価値観を生み出すとしている。
共通の体験とは、嫌消費世代でいえば、年少期のバブル崩壊であり、少年期のオウム事件であり、阪神大震災であり、青年期の9.11である。
消費には顕示性が伴う、と本書では書かれている。
しかも、この「嫌消費世代」は、特に顕示性が強い、と分析されている。
それにも関わらず、消費をしないのは、
・将来への不安
・所得の低迷
などに加え、
「消費することが、周囲へマイナスのアピールとなる」からだ、とされている。
それを端的に表したのが、「クルマ買うなんてバカじゃないの?」というオビのコメントだ。
実際のところ、バブル崩壊以降、「節約しなさい」「モノは大事にしなさい」「環境を大切にしなさい」と言われ続けて育っているのだ。
なんでもかんでも買ってホイホイ捨てる人間は、「嫌消費世代」においては評価されない。
また、例えば、
「家を買って30年のローンが残っているけれど、大企業に勤めている」
という男性にプロポーズされたとする。
バブル以前であれば「魅力的」と映ったかもしれない。
しかし今では、
「大企業とはいえ将来は安泰ではない。なのに30年分も借金を背負っている男性と結婚なんてできない」
と感じる女性だって少なくないのではないだろうか。
このように、世代観というのは、数十年をかけて形成されていく。
今の子供たちには、どのような世代観が育っているのだろうか。