Bookレビュー2011-vol.35 「最新 世界情勢地図」

最新 世界情勢地図

最新 世界情勢地図

フランスで出版された本の翻訳版。
フランスの元外務大臣と、地政学者による執筆。

最初の3分の1は、地図で説明される世界史である。
人類の誕生から現代までを、矢印などの図解を用いて説明されている。

真ん中の3分の1は、現代の世界が抱える課題についてのデータである。
言語、格差、犯罪、環境などである。
特に注目されるのが、人身売買について。
世界の主要な取引ルート7つのうち、2つが日本へのルートである。
買っているのは、タイ、ロシアだ。

最後の3分の1は、世界各国から見た、それぞれの世界観についての説明である。
それぞれの国の歴史的体験が、現代社会にどう影響を与えており、今後、どのような方向に向おうとしているかが解説されている。

日本で学ぶ世界情勢は、アメリカやアジア、あるいは日本と関わりの深いイギリスやドイツに偏重する一方で、トルコ、インド、スペイン、ブラジルといった重要な国については軽視されがちである。
またそれぞれの、政治的判断や社会的問題についても「正しいこと」「間違ったこと」という切り分けを(たとえ明文化されていなくても)行わざるを得ない。

本書は、それぞれの立場を偏りなく解説しているという点において、非常に優れており、教科書・教材に採用されても良いほどの良著だと思う。