2012年に読んだ本から選ぶ10冊

時間のおとしもの (メディアワークス文庫)

時間のおとしもの (メディアワークス文庫)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」シリーズの入間人間の短編集。 「時間」をテーマに、ホラー風、コメディ風、ミステリー風、恋愛風の4つが収録されている。 細かい伏線が綺麗に回収されていく感じは、素敵。

I Care Because You Do

I Care Because You Do

1990年代。
世紀末。
「新世紀」と題したエヴァンゲリオンの世界が破滅を迎え、オウム地下鉄サリン事件が起こり、XJapanが解散してhideが死に、ヤンキーが幅をきかせ、オタク文化は今ほど市民権がなく、経済成長とは無縁。

そんなシャカイで青春を過ごしたセダイの3人の物語。

1975〜85年生まれには、きっと響くものがあるだろう。

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

明治維新から近代化へ進む日本の思想的な躍動感を感じる。

「人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」なのだが、それは「機会平等」であって、「結果平等」ではない。
競争社会の到来を感じさせる。
この50年後に『蟹工船』が書かれたことは注目すべきだろう。

君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫 日本の名作)

君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫 日本の名作)

中学生の主人公が、友人や家族との日々の生活を通して、自分と社会との関わりを考えていく。

その思考を引っ張っていくのは「おじさん」だ。

「後悔」や「痛み」についての考察は、とても面白かった。

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

グローバル化社会と言われ、インターネットで海外の情報も手にはいるようになった現代だけれど、海外の「生活的価値観」というのは、なかなか得られない。

本書では、実際に海外を歩いて回った著者がいろんな国の「生活的価値観」についての解説を含めながら書かれていて、それがとても良い。

もう一つ特徴として挙げられるのは、十年以上前から現在までのグローバル化の流れを感じられる物語になっていること。

「これからはグローバルだ」といった未来思考の本ではなく、過去から現在へのグローバル化が、実例を挙げながら書かれているので非常に説得力・納得感が高い本。

コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)

コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)

「つくらないデザイナー」山崎亮さんの著書。
コミュニティをつくる実践的なノウハウが公開されているが、本人の素養によるところがかなり大きい。
真似すれば良いというものではないだろう。
もっとも、それがデザインという仕事の本質的な部分なのだろうけれど。

POSSE vol.15: 橋下改革をジャッジせよ!

POSSE vol.15: 橋下改革をジャッジせよ!

先日の衆議院選挙を前にしたいろんなドタバタで、何が橋下改革なのかも良く分からなくなっているけれど、2012年6月刊行当時において、冷静かつ中立的に検証された本だと思う。

「婚活」提唱者の白河桃子さんと、女子大講師の常見陽平さんとの共著。
データが豊富で、中身が濃い。
専業主婦を目指そうとしている女子にはぜひ読んで欲しいと思うけれど、専業主婦を目指すような女子は、こういうグラフやデータがたくさん載っている本は読まないかもしれない。

なので、彼氏が買って、彼女に読ませるのが良い。

49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える

49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える

まだ29歳なのだけれど、やはり心配なのは将来設計である。

本書では、定年退職後に不足されると予想される生活費をどう捻出するかについて、金融的手法によるアドバイスをしている。
たとえば、住んでいる家から老人ホームに引っ越すときは売るよりも貸したほうが良いとか、生命保険の保険金を受け取る権利を売却して、生活費を確保するといった方法だ。

こういった老後の生活費に最も影響するのが、自分の寿命だ。
本書でも指摘されているが、平均寿命というのは、生まれてすぐ死ぬ人まで含めた平均である。つまり「生まれた場合、平均して何歳まで生きるか」が平均寿命だ。

一方で、たとえば50歳の人はすでに50歳まで生きているのだから平均寿命より長く生きる確率が高い。
本書の表によれば、男性の平均寿命は78.5歳なのに対して、50歳の男性の平均「余命」は30.6歳。つまり、80.6歳まで生きることが見込まれることになる。
しかし、80歳まで生きた人の平均「余命」は8.2歳であり、80歳まで生きると今度は平均して88歳まで生きる。
こうなると平均寿命より約10年長いわけで、1年を仮に200万円程度(医療費だって若い頃よりかかる)で過ごしても10年で2000万円必要だ。

こういった長生きリスクの管理は、現代ではかかせないだろう。

偶然の科学

偶然の科学

「予測」というのが世の中にあって、それが何の頼りにもならないことは、リーマンショック東日本大震災で明らかだ。

もう一つは「解釈」というのがあって、過去に起きたことを分析し、意味づけをする。
けれど、それは起こった後になって「原因はこれだ」という解釈をするだけのことで、その原因があったら絶対にそれが起こるわけではない。つまり、解釈をしてもほとんど意味はないのだ。

本書では、「偶然」をテーマに「未来の予測」と「過去の解釈」という手法を否定する。
その対案として提示しているのは、起こっている「現在」にリアルタイムに対応することだ。
つまり時間幅を短くすることで「偶然」が入り込む余地を少なくすることが、効果的なのである。

この観点からは、いわゆる「PDCAサイクル」のうち、「Plan」と「Check」が否定されているように読める。
しかし、そのサイクルの回転を早くすることで、やはり偶然の入り込む余地を少なくすることは可能だろう。