Bookレビュー2011-vol.41 ダグラス・パーヴァイアンス『前に進む力』

前に進む力

前に進む力

ジャズオーケストラ奏者による自己啓発本
個人の体験からくる、やさしい語り口が特徴。
また、16人という比較的小さな組織をまとめる方法についても書かれている。
企業に勤めている人だけでなく、部活やサークル運営の参考にもなるだろう。

本書の最も重要な点は、第一章の冒頭部分に書かれている。

「居心地のいい場所では何も起こらない」

これは、ソーシャルメディア社会で、最も注意すべき点だと思う。

自然発生的に形成される現実のコミュニティは、必然的にある程度は居心地が悪い。
それは、コミュニティの参加者を自分で選べないからだ。
むしろ、入学・入社など、すでに形成されているコミュニティに自らが新参者として加わることのほうが多い。

一方、ソーシャルメディアは、自分を中心として、自らコミュニティを形成する。
例えば、Twitterで自分が見たい人だけをフォローした結果、タイムラインには自分と近い考えの情報だけが流れてくる。
このことは、非常にコンフォータブルな一方、バランス感覚を失わせてしまう可能性がある。
それに、自分の考えに近い人の発言だけを見たところで、自分の考えの発展は望みにくい。

例えば、英語が分からなくても外国人のアカウントをフォローしてみる。
そうすると、自分が英語が分からないことが身にしみる。

または、自分が大嫌いな意見の人をフォローしてみる。
そうすると、自分が考えていたことの欠点が見えてくる。

「見たくないものを見る」「居心地の悪い場所にあえて自らを置く」ことは、自分に欠けているものを見出しやすいと思う。