Bookレビュー2011-vol.48 高田和明『ジェノサイド』

ジェノサイド

ジェノサイド


伊藤計劃虐殺器官』とは、似て非なる小説。
虐殺器官』は、善なる人間に秘められた「虐殺」をえぐり描く。ラストシーンはまさに「えぐられた虐殺」と言えるだろう。
一方、本書は人間の性質に「虐殺」を置き、その一方で、わずかな「人間の善性」を描く。

本書のもう一つのテーマは「人類」そのものである。
そのテーマを描くためには、「超人類」に登場してもらう必要があったわけだが、この「超人類」の存在感が不足していたように感じる。
森博嗣の一連作品に登場する天才「真賀田四季」の存在感には残念ながら及ばない。

本書は、政治的にも科学的にも、事実とフィクションが織り交ぜられており、その区別を付けるには一定の知識が必要だが、全てフィクションとして物語に没頭するのが正しいように思う。