震災直後のブログでの予見について振り返る

震災の直後にブログに書いたことを見直してみたい。
(当時はココログの『essere』というサイトだった)

「2011.3.13 バーチャル被災者にならないために積極的に日常を取り戻すということ」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/313-b20e.html

「2011.3.15 これまで通り、原子力発電を利用する勇気」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/315-494d.html

「2011.3.17 震災による新卒採用への影響について」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/317-e585.html


かなり極端に書いているし、間違っていることもある。
当たっている部分もあるが、予測というよりは、当然の成り行きな部分が多い。
いくつか引用しながら振り返ってみる。



テレビやネットで情報を得て、「何かできることはないか」「何もできない自分がくやしい」と言った意見も多い。(中略) こういう、テレビやネットの影響を受けて精神的なダメージを負ったり、非日常状態になってしまった人も、ある意味では被災者だ。「バーチャル被災者」というべきだろうか。
「2011.3.13 バーチャル被災者にならないために積極的に日常を取り戻すということ」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/313-b20e.html

これはこの後、多少問題になって、その後は「元気を出そう」系の番組が増えた。
(それはそれで問題があったと思うが)



現時点でも、原子力発電所のリアルタイムな状況については次々と報じられているが、もう長期的な展望はほとんど定まったと考えて良いと思う。
つまり、今回の地震による原子力発電所の破損(事故ではない)が直接の原因で人が死ぬことはない(なぜなら、地震と同時に爆発しなかったからだ)。
それに、大量の放射性物質が広範囲に飛散し、人体に甚大な影響を与えることもない。

「2011.3.15 これまで通り、原子力発電を利用する勇気」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/315-494d.html

これに関しては、いろいろなところで「原発事故」と言われているので、事故ということになっているらしい。
津波で自動車が流されて壊れてもそれを事故というのか、という疑問はある。

原発事故による放射性物質が直接原因となって死んだ人はまだいない(少なくとも発表されていない)が、作業員が作業中に一人亡くなった。
この方に関しては、事故がなければ発生しなかった作業なので、死なずに済んだ可能性は高い。
また、農家の方で原発被害を苦にして自殺された方もいらっしゃる。

一方、当時は「3ヶ月後にはみんな死ぬ」みたいな情報も見かけたが、4ヶ月経っても、未だに人体への甚大な影響があったという情報は公表されていない。
尿から放射性セシウムが検出されたという話はあるが、排出されているのは排出されない状態よりは良いし、それがそのまま人体への甚大な影響ということにはならない。

牛肉の問題もあるが、「その汚染された牛肉を毎日100g、1年間食べ続けた場合の最悪のケース」として、将来ガンになる確率が1〜2%ほど上昇する「かもしれない」という状況なので、甚大とは言えないだろう。

幸い、今回は「逃げる時間があった」。
一方、原爆のときは、救出や安否確認のために人々は自ら爆心地に向かって行った。
この違いは大きい。




一方で、今回の原子力発電所の破損で起こると僕が考えることは以下の通りだ。
1.原子力発電への日本人の疑心暗鬼(これはマスコミによりすでに誘導されている)
2.「1.」による原子力発電所の操業停止などによる発電方法のシフト
3.「2.」による発電コスト(つまり電気代)の上昇(発電は原子力が一番安い)
4.「3.」による生活費用・生産コストの上昇、または経済活動の停滞
※ここまでの段階でマズさに気付いて、ストップがかかれば問題はない。問題はここからだ。
5.「4.」による国際競争力の低下(特に輸出産業)
6.「4.」「5.」による失業率の増加
7.「6.」による自殺率の増加、財政難、社会保障の不足。

「2011.3.15 これまで通り、原子力発電を利用する勇気」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/315-494d.html

「1.」については、3月15日の時点で起こっていたことだ。

「2.」については、2ヶ月後の5月9日ごろに浜岡原発の停止の話が持ち上がり5月13日から停止した。以降、点検などによって順次停止した結果、すでに半分以上の原発が停止しており、再開も未定である。来春には全ての原発が停止する見込みだ。当面は化石燃料による発電にシフトすることになる。

「3.」以降は、これから起こることだが、原発事故による保証と、発電コストの上昇の2つの要因があり、電気料金の上昇は避けられそうにない。もし太陽光による発電電力の買取制度が始まれば、もっと上がることになるだろう。

「4.」に関しては、原発の停止による節電によって日本総合研究所によると原発停止により今年度の関西のGDP成長率が0.3ポイント低下するという。関西のGDPが80兆円とすると2400億円ほどだ。関西の人口は約2000万人なので、1人あたり年間12000円、4人家族で年間約5万円程度が失われると思えば、思ったより影響は小さい。
ただし、このまま全ての原発が止まれば、平成24年度には、この2倍程度の影響が出ると見られる。
また、これは節電の影響であって、電気料金の値上げの影響は織り込まれていない。

「5.」および「6.」に関しては、7月15日の日経に掲載された主要企業100社の社長へのアンケートによると、3年以内の生産拠点や本社機能の一部の海外移転を検討している企業が4割に達した。これが実行に移されれば、そのまま国内失業率の増加につながる。


実は、個人的にはもっと極端な反原発運動が起こると予想していたし、ポピュリズムに頼らざるを得ない民主党によって政治的にも反原発に舵を切ると思っていた。
けれど反原発の方々にとって不幸なことに、政府内で脱原発を積極的に掲げるのは菅総理だけで、その菅総理の支持率が一向に上がらない。
むしろ支持率が低い菅総理脱原発を掲げているせいで、民主党がそちらに舵を切れないようにも見える。
こういった状況により、菅直人氏が総理でいる間は、脱原発が実質的に進む見込みは低い。
(今は単に停止した原発を再開していないだけで、それに代わる戦略が打ち出されているとは言い難い)



原子力発電への過度な依存からの脱却は、技術的な進歩から行われるべきもので、感情的に行われるべきではない。
「2011.3.15 これまで通り、原子力発電を利用する勇気」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/315-494d.html

つまり、火力でも太陽光でも風力でもいいので、それを先に作って電力を確保してから原発を止めたらどうか、ということだ。
しかし、こういう意見はいまだに見かけない。
「すぐに止めますか」それとも「ずっと続けますか」の極端な議論になっているように見える。




被災エリア外の企業、とくに中部以西ならば、採用活動自体に大きな影響はない。
とはいえ、東京に本社を構える大企業のおこぼれに預かるのが、地方企業や中小企業のこれまでの採用スタイルだ。大企業の採用が停止している中、そういった企業が先に内定を出すことができるのか、また、内定を出したところでどれだけが実際に入社するのかが非常に不透明だと思う。

「2011.3.17 震災による新卒採用への影響について」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/317-e585.html

これは、予想された通り、今年は就職活動を未だに続けている学生が多くなっている。
4月や5月に内定をもらっても、それは本命ではないので、6月以降の選考を受け続けるのだ。
7月9日の日経によれば、現在の大学4年生で就職活動を終えたのは34.4%に過ぎず、前年に比べ11.7%少ない。




直接、震災のダメージを被った企業はもちろんだが、ほとんどの企業にとって、経済的な展望は暗い。
そのため、採用数が大幅に減少する可能性が高い。

「2011.3.17 震災による新卒採用への影響について」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/317-e585.html

これに関しては、完全に見込み違いだった。
採用数の大幅な減少はなく、また、来年度は13%ほど採用数(正確には採用目標人数)が増加される見込みだ。




以上のような状況から、本来は50万人程度のはずの新卒(扱い)就活生が、70〜80万人程度まで膨れ上がっている可能性がある。
一方、企業に採用される人数は、2010年度で33万人程度だった。
これが、今回の震災でどれくらい減少するかは不透明だが、仮に28万人とすると、純粋な卒業数ベースでも就職率は50%を割り込む可能性がある(留年などで卒業生が増えているため)。

「2011.3.17 震災による新卒採用への影響について」
http://essere.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/317-e585.html

これに関しては、7月9日時点で内定率は49%であり、前年より6.6%低い状況である。
最終的には、卒業時点で55%に届くかどうかという状況だろう。
(採用数が減らなかった分が、5%ほどのズレになっている)


以上、振り返ってみたけれど、全体としては、震災直後にブログに書いていたことよりも、若干良い状況だと思う。

また、今、気になっているのは腐葉土の問題だが、まだ書けるほど状況を把握していない。