Bookレビュー2012-vol.20  『チケットを売り切る劇場: 兵庫県立芸術文化センターの軌跡』

チケットを売り切る劇場: 兵庫県立芸術文化センターの軌跡 (文化とまちづくり叢書)

チケットを売り切る劇場: 兵庫県立芸術文化センターの軌跡 (文化とまちづくり叢書)

兵庫県立芸術文化センターを成功事例として、その設立、運営、企画、マーケティングなどについて分析した本。
公共文化施設についての研究書でもある。

いわゆる「ハコモノ」行政が批判を浴びる中、どのような施設であれば、その価値を認めるべきなのか、というのは非常に難しい。

本書では、「兵庫芸文センターを維持するために、いくらなら寄付するか」というアンケート調査を行い、県内だけで年間54億円の寄付金が見込めるという試算がされたと報告している。
これは、単なる利用価値だけではなく、その施設の存在による地域の魅力の増加や、地域の子供の教育面への配慮など、利用以外の価値観も金額として含まれている。

一方で、兵庫芸文センターへの県からの補助金は年間5億円ほどであり、上記の調査が正しいとすれば、補助金の10倍以上の効用を県民に与えているということができる。

こういった評価手法は、非常に分かりやすく、施設存続の可否の判断材料にもなる。
もっと広く行われるべ調査ではないだろうか。