Bookレビュー2012-vol.13  橋爪大三郎, 大澤真幸 『ふしぎなキリスト教』

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

西洋文化の根源であるキリスト教についての、Q&A対談形式の本。

本書で指摘されているように、キリスト教ユダヤ教を否定する形で出現したにも関わらず、ユダヤ教自体を旧約聖書として、そしてユダヤの神ヤハウェを内包していることにムリがあるように思う。

そのムリを一身に請け負っているのがイエスだ。
神なのか、人間なのか、人類を罰する存在なのか、人類の罪を償う存在なのか。
「両方だ」というのが「三位一体説」なわけだけれど、この世界を作って、人類を作って、作った人類が罪を犯してたのでイエスになって全部の罪を償って死んで、復活して天に昇った、という流れは、「自作自演プレイ」あるいは「ステマステルスマーケティング)」と言われても仕方ないだろう。
中世だからこそ信仰が広まったが、現代なら「自演乙」とされて炎上するのではないか。
いやむしろ、そんな存在だからこそ、信仰の対象になるのかもしれない。

西洋における科学の発展がキリスト教的な価値観から生まれたという解説は面白い。
科学的発見・発展によって「神の存在を否定している」のではなく、「神が作った法(法則)を証明している」というのは、日本人にはわかりにくい価値観だろう。
一方、「日本人がモノ作りが好きな理由は、万物に神を見出すアニミズムにある」という指摘も面白い。

できれば本書の最後には、現代の金融主義がなぜ生まれたのかをキリスト教から導いて欲しかった。