もし「コミュニケーション能力に悩む就活生」がドラッカーの『マネジメント』を読んだら

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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前回の記事で、ドラッカーの『マネジメント』の理論に基づけば、採用担当者が面接によって就活生のコミュニケーション能力をチェックすることはできないのではないか、と提起をした。

しかしながら、現実として、採用担当者は新入社員にコミュニケーション能力を求めている。
つまり、就活生のコミュニケーション能力に「期待」している。
「期待」は、以下でも述べるとおり、コミュニケーションそのものである。
ここに、就活生と採用担当者との間に「コミュニケーションが成立する余地」がある。
ゆえに、就活生もまた、この『マネジメント』のコミュニケーション理論を活用する必要がある。


さて、繰り返しになるが、ドラッカーによると、コミュニケーションは「一角獣のように未知」であるとしながら、以下のことは確かだとしている。

  1. コミュニケーションとは知覚である。
  2. コミュニケーションとは期待である。
  3. コミュニケーションとは要求である。
  4. コミュニケーションとは情報ではない。

1.コミュニケーションは知覚である

コミュニケーションは、相手に伝わった時点で初めて成立する。
あなたが話した「内容」ではなく、相手が受け取った「知覚」がコミュニケーションである。
ゆえに、暗記した内容を話すことはコミュニケーションではない。
「相手がどう聞いているか」を注意深く観察し、そこから次のコミュニケーションを生産する必要がある。


2.コミュニケーションは期待である

採用担当者は、あなたに期待している。
あなたは、それに応えなければならない。
問題となっているのは、あなたが「何を言いたいか」ではなく、あなたが「どう期待に応えられるか」である。


3.コミュニケーションは要求である

選考に挑むあなたの要求は「採用」である。
しかし、選考の段階での採用担当の要求は「選別」である。
ここに、コミュニケーションの断絶がある。
ゆえに、あなたは選別されるまでの間は何も要求すべきではない。
心配しなくても、採用担当者があなたの採用を要求してきたとき(=内定が出たとき)に、あなたはコミュニケーションの一部として要求する機会を得ることができる。


4.コミュニケーションは情報ではない

コミュニケーションにおいて重要なのは、情報ではなく、共通の体験である。
しかし、あなたは採用担当者と共通の体験を全く持たない。
そのため、あなたは2種類の共通の体験を創造する必要がある。

1つめは、企業の体験を事前に共有しておくことである。
その企業の理念、目標や歴史を調べて追体験することで、あなたは採用担当者と共通の体験を得ることができる。

2つめは、面接を通して、採用担当者にあなたの経験を共有させることである。
採用担当者は、あなたの過去について尋ねる。
その際の答えとして、情報だけでは不十分である。
あなたは、採用担当者に、まるで自分がそれを体験したかのように錯覚させる必要がある。
つまり必要なのは、ストーリーである。