電子書籍が再現できていないのは「読む感覚」ではなく「買う楽しさ」

シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」が撤退するらしい。
ソニーのReaderも、それほど普及していないように見える。
アップルのiPadも、複合的に使えるタブレットとして普及しているのであって、電子書籍端末として評価されているのかどうかは不明だ。

結局、電子書籍は革命を起こさないのか。
(少なくともKindleが上陸するまでは)
だとすれば一体、何が問題なのか。

僕はiPadを持っているし、ソニーのReaderも触ったことがあるのだけど、「読む感覚」はほとんど紙と変わらないと言って良い。
赤ペンで書き込みをしながら読むようなヘビーな人は別だが、小説や新書を読むのに不都合はほとんどないだろう。

むしろ、問題は「買う楽しさ」の不足にあるのだと思う。
つまり「本」ではなく「書店」が再現できていないのだ。

そこで、以下にリアル書店にあって電子書籍販売サイトにないものを挙げていこう。


【1.「ボリューム感」と「売場のメリハリ」】
リアル書店に行けば、売れている本は大量に陳列されていて、そうでない本はちょっとしか置いていない。
あるいは、フェイスを2面、4面、6面などとって販売する多面陳列がある一方で、棚に1冊だけしかなくて背表紙しか見えない本もある。
この「ボリューム感」と「売場のメリハリ」によって、より魅力的な売場が作られるのだが、電子書籍販売サイトでは、こういった点をほとんど考慮していないように見える。

【2.POP】
書店と言えば、POPである。
しかし、電子書籍販売サイトにはPOPがない。
あるのは、メーカーからの商品説明だけだ。
また、オンラインの場合、レビューが蓄積されるのだが、レビューはあくまで感想であり、販促手法ではないのである。
つまり電子書籍販売サイトには「この本を売りたい」という販売者の意志がないのだ。

【3.自分以外のお客の有無】
書店に行けば、自分の他にもお客さんがいる。
立ち読みをする人や、売場の本を手に取りレジに持っていく人がいる。
しかし、電子書籍販売サイトにはいない。
この違いは大きい。
例えば、「今、この本が売れました」とか「今、よく見られている本」という情報をタイムライン的に流すだけで、サイトに活気が生まれるだろう。

【4.ここから見える本の量】
電子書籍販売サイトでは、一つの画面にせいぜい10〜20冊程度しか表示できない。
しかし、リアル書店では、一つの位置から、数百冊が目に入る。
つまり、今の電子書籍販売サイトは「買いたかった本」は検索で簡単に見つかるが、「買いたくなる本」を探すのはリアル書店よりも圧倒的に難しい。

【5.「自分の店」という感覚】
何で読んだか忘れたが、コンビニは小売店ではなく「家の冷蔵庫の拡張だ」という発想がある。
書店も同様で、「家の本棚の拡張」と言える。
電子書籍販売サイトに欠けているのは、この感覚だろう。
(ただしアマゾンは、この点を「マイストア」という戦略で補っている)