「動画」あるいは「ふでばこ」の言語学

 
動画を表す言葉についてである。

10年ほど前から、ケータイにカメラが付いたことで、動画撮影は身近なものになった。
しかしながら、言語的にはまだ整理がついていないようである。

ケータイやカメラで撮影することは、「ムービー」録画という言葉が使われている。
しかし、「ムービー」は、本来、「映画」を表す。
では、ケータイで動画撮影をすることは、「映画」撮影と同義かというと、そうではないだろう。

実際、撮影した映像は、そのまま「動画」と呼ばれることが多い。
撮影するときは「ムービー」なのに、見るときは「ムービー」ではなく「動画」になる。

一方、「動画」は英語で「animation」であり、つまり「アニメ」である。
確かに、動画は連続した静止画によって動きを表現しているが、日本で「アニメ」というと、イラストあるいはCGを用いた動画表現にのみ使われる。
そのため、ケータイで撮影された動画を「アニメ」と呼ぶことには違和感がある。

また、「動画」の共有サイトとして有名なYoutubeは、自身のコンテンツについて「video」という言葉を使っている。
しかし、日本で「ビデオ」というと、それは「ビデオカセット」のことであり、古めかしい。

これは日本語では、メディア媒体を表す言葉がコンテンツの中身まで意味しているからだ。

例えば「カセットを聞く」から「CDを聞く」になったし、「ビデオを見る」から「DVDを観る」になった。
ただし、「ブルーレイを見る」という言葉はあまり流通していない。これは現時点ではブルーレイのコンテンツがほとんど映画だけであり、「映画を観る」という言葉に置き換えることが可能だからだろう。

あるいは、DVDと機能の違いがあまりないからかもしれない。
将来的には、ブルーレイを見ることも「DVDを観る」という言葉で表現されてしまう可能性もある。

「そんなのあり得ない!」という方は、筆が一本も入っていないケースが長年「ふでばこ」と呼ばれてきたことを思い出していただきたい。

なんにせよ、グローバル化の時代なので、下記のような展開には注意が必要である。

「Hey! I made a movie! (ねえねえ、僕、動画撮ったよ)」

「Wow! Which theater can I watch it at ? (すごい!どの映画館で上映されるの?)」