「消費電力は供給電力を絶対に上回らない」ってご存知?

6月10日に関西電力が、検査を行った原発の発電再開ができないために、7月1日以降の15%の節電を圏内全域に対して要請した。

2012年の春までに、全国の原子力発電所が停止する可能性も示唆されている。
関西電力は、国内でも原子力の比率が高く、総発電量の約50%を占める。
僕は関西に住んでいるので、これらが本当に起これば、わりと切実だ。
そこで、以前から気になっていたことを確認することにした。
(関東の電力不足は他人事だったので調べなかった)


それは、「消費電力が供給電力を上回ったらどうなるか」である。
だいたいの報道は、

●「電力が足りない」
→「大変だ」
→「節電しましょう」
→「それでも足りなさそうなら電力会社が計画停電させます」

という話しかない。

つまり、「足りないようにならないようにします」という話しかなく、「実際に足りなくなったらどうなるの?」という話がない。

みんな「電力会社が上手いことやってくれるさ」と思っているか、「みんなで力を合わせて節電できる」と思っているようである。
ちょっと他人任せすぎる。
あるいは、リスクマネジメントが足りないと思う。
普通に考えて、「節電が不十分で、計画停電も上手くいかない」という場合を想定をして、その対策を練っておく必要がある。

そこで、某電力会社に勤めている友人に訊いてみた。

カンカンカン!

一応、ここで警鐘を鳴らしておこう。
この「知り合いがこう言っています」というのは、デマの典型的なパターンとして有名であります。

さて…。

まず、「消費電力が供給電力を上回る」という表現自体が「間違っている」。
当たり前だが、供給している以上に消費はできない。
水道に流れている水量以上に、水道から水が出ないのと同じだ。

ただし、最適な供給と消費のバランスがある。
水道だって水が勢い良く出すぎると困るし、勢いが弱すぎても困る。
電力も、その最適なバランスを維持しているわけだ。
最適というのは、電力が通過する機械にとって最適という意味である。
電気の場合、そのバランスは周波数(ヘルツ)である。

もし、最適なバランス以上に消費をすると、周波数が下がる。
これは、機械にとって問題がある。
凄腕のサーファーでも弱い波では波に乗れないのと同じだ。
また法律で、そういう問題がある電力を供給してはならないことになっている。

そこで、周波数が下がったときには、周波数のバランスがとれるように、自動的に一定の地域の電力供給をストップするようである。
ただし、自動なので、どこが停電するかは分からないらしい。

つまり、どっちみち停電するのだ。
ただ、いきなり圏内一斉に大停電が起こるということは、不慮の事態を除けばなさそうである。
(ネットでは大停電が起こるという意見が多いが、たいてい論拠が不明なので、電気のプロの友人を信じることにした)


ついでに、良く目にする意見についても訊いてみた。
それは「電力が足りないなんて、原発を続けたいためのウソだ、演出だ」というものである。

これも論拠が不明である。
というか、普通に考えたら、ウソでも演出でもないと思う。

こういう意見が出た理由として、東京電力の見込み供給電力が当初の想定よりもどんどん増えていったことがあるかもしれない。
しかし、電力が足りないというのがウソや演出であれば、「見込み供給電力は当初の想定から増えないはず」である。
増えてしまったら演出にならない。

また、電力会社にとって、電力は商品である。
15%の節電を呼びかけるということは、そのまま売上ダウンを意味する。
企業としては、売れる電力は売れるだけ売りたいはずだ。
(長期的な原子力発電による大きな売上のために、短期的な売上減を犠牲にしているという可能性はなくもないが)

ただし、バッファは当然あるだろう。
1週間後に届くと言っていた荷物が5日後に届いたときの「2日間」のような「安全志向」である。
これを設けるのは常識的な判断であり、これについてウソや演出というのは間違いだろう。

ちなみにその友人は「さぁ」と言っていた。