Bookレビュー2011-vol.42 楠木建『ストーリーとしての競争戦略』

ポーターの競争戦略論をベースに展開する競争戦略論。

経営の最終目標を「長期的な利益」とした上で、そこに至るまでのストーリーを構想し、それに基づいた戦略で事業展開することが肝要であると述べている。

「他社の良い部分を真似ること」いわゆる「ベストプラクティスの模倣」が、必ずしも自社でうまく機能しない理由も、このストーリーにあるという。

他社のベストプラクティスの単なる模倣は、「ストーリー」に沿っているからこそパフォーマンスを発揮するのであって、そのストーリーの一部だけを切り取って導入しても「ストーリー不全」を引き起こし、逆に他社に競争優位をもたらすと、本書では主張している。

一方、「独自のストーリー構築」に成功した企業も、当初から完璧なストーリーがあったわけではない。
むしろ、「そうするしかなかった」という状況が、その企業に独自のストーリーをもたらした部分が多いという。

また本書では、企業として構築した「ストーリー」を、どのようにして社員に浸透させたのか、という点に触れられていない。
この点は、実際に経営やマネジメントに携わっている人にとっては不満が残るところだろう。